1 彼の名前は「翔」と言うらしい

夜の駅 駐車場 現在

彼と初めて会ったのは最寄り駅の傍にある駐車場だった。

少しくたびれた長袖のワイシャツに袖を通した私は、目的地へ向け車を走らせている。
煌々とライトは光っているが、私の気持ちは少し暗い。

”19時14分” 会話が途切れた時間である。
ゲイの方御用達の某アプリで会話を始めて意気投合をした私たちは、夜9時に待ち合わせをした。
しかし、なかなか返信が返ってこない。
あっ… いつものパターンだと思うことにした。
多少のイラつきはあったものの、私は家族とピザを食べるのに忙しかった。

”21時32分” アプリを開いてみる。通知が来ていた。
S「すみません塾長引いちゃって」
K「大丈夫やけど今から行っていい?10分くらいかかるけど」
S「大丈夫です!」
K「スタバとかで話しますか?」
S「すみません長くは話せなくて・・・」
そんな会話をして会うことになった。
始めはロータリーに向かうつもりだったが、やめて駅のすぐ横のコインパーキングにした。

車を停めて文字を打つ。
その数分後、車のすぐ横に自転車と供に学ラン姿できょろきょろと辺りを見回す人影を確認した。
ゆっくりと車のドアを開き、人影に近づく。
(第一印象は ”お目目が二重でめっちゃかわいい…”
仕事の疲れを忘れ、毅然とした態度で話しかける。
K「はじめまして、Sさんですか?」
S「そうです。はじめまして。」

数秒間をおいてまた私から話しかける。
K「ヨルシカ好きなんですか?」
S「好きです!ずっと聴いてます」
K「ライブにはいったことあるんですか?」
S「ライブはまだないです。けど緑黄色野菜のは行きました!」

K「そういえばその学ラン、、高校当てていい?」
S「はいw」
K「K高校だよね?」
S「そうですwwよく分かりましたね」
K「俺もその高校行ってたから」
S「え!!まじですか!」
K「まじプリントの量えげつないし、朝課外だるいよねw」
S「めっちゃ分かります!でも自分『文Ⅰ』選択なので課外時々なんですよ」
K「うわっせこw」
K「そういえば名前なんて言うの!」
S「翔って言います」

そんな感じで盛り上がり、気づけば1時間半くらい経っていた。
私は仕事、彼は受験生のためそろそろ帰らないといけないと思い、最後にLINEを交換したいと声をかける。
すると彼は少し考えた後にこう言い放った。
「すみません。LINEはちょっと・・・」
正直かなり驚いた私だったが、すぐに切り返した。
「トプ画とか個人情報とかあるしまだ早いよねw」


若干の違和感を覚えつつその日は解散した。


こんな経験は初めてだ。

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